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コラム

2022年10月1日

【2022年4月・10月】育児・介護休業法の改正ポイント

2022年、育児・介護休業法では、深刻な問題となっている少子化問題に対応すべく、職場における雇用環境の整備や男性の育児休業を目的とした法改正が行われました。

本記事では、202241日施行および101日施行の改正についてご紹介するとともに、実務者が注意したいポイントについてご説明します。

◇2022年4月1日施行の改正

4月1日施行の改正は以下の2点です。

  • 個別の制度周知・休業取得意向確認、雇用環境整備の措置と義務化
  • 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

妊娠や出産等を申し出た従業員に対して、育休に関する以下の事項の周知・取得意向の確認が全て義務付けられるようになりました。

周知と意向確認の方法は、「面談」「書面交付」「FAX」「電子メール」等いずれかで行う必要があります。

育児休業を取得しやすくするために、以下いずれかの整備等を行います。

  • 育休に関する研修の実施
  • 育休相談窓口設置など相談体制の整備
  • 従業員の育休取得事例の収集や提供
  •  育休取得促進に関する方針の周知

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者が育児・介護休業を取得するには、2022年4月1日改正前では以下の条件が必要でした。

  1. 引き続き、雇用された期間が1年以上

  2. 1歳6か月までの間に契約が満了することがあきらかでない

このうち1.の条件が撤廃され、無期雇用労働者と同じ扱いになりました。

◇2022年10月1日施行の改正

10月1日施行の改正では、出生時育児休業(産後パパ育休)と育児休業の分割取得ができるようになったところが大きな変更点となっています。

出生時育児休業(産後パパ育休)

出生時育児休業(産後パパ育休)とは、育児休業とは別に休業が取得できる制度であり、原則出生後8週間以内の子を養育するためのものです。男性の育児休業取得促進を目的としており、産後休業の対象でない労働者が取得できます。

対象期間と取得可能な日数は、子の出生後8週間以内に4週間までとなっています。また、2回に分割しての取得が可能ですが、分割取得の際には初めにまとめて申し出ることが必要です。

育児休業では休業中の就業は原則不可ですが、産後パパ育休では労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中でも就業可能です。休業中の就業は労働者から希望を申し出る場合に認められるものであり、事業主から労働者に就業可能日の申出を求めることは認められていません。

厚生労働省 「育児・介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説」 (都道府県労働局雇用環境・均等部(室))より

産後パパ育休中の就業日数および時間には上限があります。産後パパ育休中における就業日数および時間の上限は、休業期間中の所定労働日の半分・所定労働時間の半分です。

例えば、所定労働時間が1日8時間、1週間の所定労働日が5日の労働者が2週間の休業(所定労働日10日)を取得した場合の就業上限は、労働時間は40時間、労働日数は5日となります。

休業中の就業の仕組みを労働者に知らせるときには、育児休業給付や育児休業期間中の社会保険料免除について、休業中の就業日数次第ではその要件を満たさなくなる可能性があることも説明するようにしましょう。

育児休業の分割取得

2022年10月の法改正により、子が1歳までの育児休業において、原則として分割して2回取得できるようになりました。取得の際は、それぞれの休業の前に申出をします。また、1歳以降の育児休業においても、育児休業の開始日が柔軟化されたため、夫婦で途中交代することが可能になりました。1歳以降の育児休業の再取得も今までは不可でしたが、特別な事情がある場合に限り認められるようになっています。

出生時育児休業(産後パパ育休)を申請する際は2回分をまとめて申請することが必要ですが、育児休業の分割取得にあたってはまとめて申し出る必要はありません。また、1歳以降の育児休業は分割不可である点にも注意が必要です。

分割化に伴い「休業開始予定日の繰り上げ変更」「休業終了予定日の繰り下げ変更」も、1回の休業につき、繰り上げ繰り下げともに1回ずつ行うことが可能です。

実務担当がおさえるポイント

2022年の育児・介護休業法改正にあたり、実務担当がおさえたいポイントは以下の通りです。

・制度の周知を徹底する

通達によると、育児休業・産後パパ育休に関する研修を実施する場合は、「雇用するすべての労働者に対して研修を実施することが望ましい」とされています。少なくとも、管理職の者については、研修を受けたことのある状態にすることが必要です。

(厚生労働省pdf 育児・介護休業法の改正についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf

制度周知の徹底は、女性労働者に対するマタハラ(マタニティハラスメント)、男性労働者に対するパタハラ(パタニティハラスメント)の防止につながります。

・出生時育児休業(産後パパ育休)や育児休業の期日・日数を管理する体制を整える

産後パパ育休の創設、育児休業の分割化や夫婦間での交代取得が可能になったことにより、人事労務の実務担当者は育児休業の期日や日数の管理が複雑になるでしょう。

業務を円滑に進めるため、撤回などの場合も含めて現在どのようなルールがあるのかを、しっかりと確認しておきましょう。

・社会保険料免除の要件を満たしているかを確認し、所定の場所へ届出を行う

育児休業や産後パパ育休を取得する大きなメリットの一つが、労働者も事業主も休業中は社会保険料の支払いが免除となる点です。ただし、要件を満たしていないと対象外となりますので、免除の要件を満たしているかの確認が必要です。

社会保険料免除にあたっては、事業主側が所定の場所へ申出をしなくてはなりません。厚生年金については事業所の所在地を管轄する年金事務所へ、健康保険については加入している健康保険組合に申出書を提出します。

2022年の育児・介護休業法改正によって、さまざまな立場の労働者が育児休業を取得しやすくなりました。一方、事業主側にとっては、休業の期日や日数の管理がより複雑になり、労働者への周知徹底など育児休業が取得しやすい環境整備が義務付けられるようになっています。

今回の法改正は深刻な少子化を食い止める目的で行われたものです。男性労働者をはじめ、さまざまな立場にある労働者が育児に参加できる環境を整えられるよう、育児休業取得にあたって柔軟な対応ができる準備をしておきましょう。